図書室に着くと、坂木くんが女子生徒に貸し出しをしている最中だった。返却期限が印字された用紙を本にはさみ、手渡している。
 私がカウンターに入ると同時に、彼女は図書室を出ていった。見る限り、奥にいる大田くんと神谷さん以外には人がいなさそうだ。
「ありがとう、坂木くん」
 そう言って折りたたみ椅子に座ると、坂木くんは「全然」と言って微笑む。昼間に見たアラタと顔が重なって、私はコホンと咳払いをした。
「あのさ……坂木くんて……」
「ん? なに?」
 私は、膝の上のスカートをぎゅっと握った。どう聞けばいいのだろう。トキカプって知ってる? ……そう言うのは、あまりにイタい。
「誰かに似てるって言われたことある?」
「似てる芸能人? うーん、あんまりないかな」
 はい、終了。これ以上は踏みこめない。妙な間ができてしまい、私は次の話題を探す。
「えっと……坂木くんはゲームしたりする?」
「ゲーム? うん、するよ。紺野もするの?」
 あぁ、やはり墓穴を掘った。こういう流れになるのはわかっていたはずなのに。
「ちょっとだけ。スマホアプリとかで」
「そうなんだ、ちょっと意外だな。なんてゲーム?」