トキカプ男子は、コンセプト上、友達以上恋人未満という設定だ。だから、私は嘘は言っていないし間違ってもいない。
「あー……そう」
 江藤くんはさほど興味のない顔でうなずいた。そして、「お邪魔しました ー」と言って、そのまま校舎のほうへと歩いていった。私はホッとして、またスマホをつける。
 チャット画面だから、まだアイコンは小さかったものの、アラタのアップを見たら、完全に坂木くんと思われていただろうな……。
 また違う可能性にもぞっとして、私は今後学校でトキカプは起動しないようにしようと心に誓った。

「えー、昨日の夕方、近くで不審者の目撃情報がありました。中年の帽子をかぶった男性で……」
 帰りのホームルームで、先生が不審者情報を呼びかけた。たまにあることだからか、みんなそこまでざわつきはしないものの、その特徴に耳を傾ける。
「なるべく、ひとりで登下校しないようにしてください。とくに女子生徒。春は変な人が多いので……」
 夏には、夏は変な人が多いので、と言うのだろう。まぁ、どの季節にも不審者はいるものだ。