夕食を食べていると、お母さんがいつものように聞いてきた。この質問は、地味にプレッシャーだ。お母さんはよかれと思って聞いているのだろうけれど、“どうなの？”なんて聞かれたら、
「……普通」
　としか答えようがない。
「お友達とか……」
「まだ」
「そう……そうよね。まだ一週間くらいしか経っていないんだし」
　そう思うんだったら聞かないでほしいし、そんな複雑そうな表情をしないでほしい。お母さんを悲し ませたくないのに、勝手に悲しまれると、逆にモヤモヤした気持ちになる。
「でも、話ができる人は……いる」
　これ以上心配させないようにそう言うと、お母さんはパッと明るい表情になった。
「あら、そう！　よかったわね。そうやって徐々にお友達になっていくのかもね」
　お母さんの言葉に、私の手は止まる。そして、口に運びかけていたグラタンのスプーンを、また皿に戻した。
　今日、いつもより若干話ができたからか、坂木くんのほか神谷さんや大田くんまで頭に浮かべて話していた。けれど、“お友達”というワードには違和感を覚える自分がいる。