中学のときの新聞作りのことを思い出して提案すると、坂木くんが口を縦に開いて何度もうなずいた。
「……紺野すげぇ」
 大田くんと神谷さんも、小さくうなずいている。正直言って、すぐに思いつきそうな気がするけれど、そんなことは言えない雰囲気だ。
「紺野さん、ありがとう。そうする」
 神谷さんからは、今日二回目のお礼を言われた。なにもすごいことはしていないのに、妙な心地だ。
「紺野、俺らと一緒に広報委員になろう」
 真顔の大田くんは、冗談なのか本気なのかわからないことを言う。
「ダメだよ。紺野は図書委員なんだから、渡さない」
 坂木くんは、通せんぼするみたいに私の前に両手を広げた。トキカプみたいな“俺のものイベント”の発生に、目の前がチカチカする。
 なんだ、これ。私なんかがこの人たちと同じ空間にいるのもおこがましいのに、私を話題にしてこんなやりとりが生まれるなんて、現実世界のバグとしか思えない。
 でも……なんだろう、すごく楽しい。

「美尋、どうなの? 学校は」