「あ、いや、今日もトイレ行くから……先に行っててください」
「そうなの? わかった。じゃあ、オオタンとカミヤンと一緒に先行っとくね」
 神谷さんも、いつの間にかカミヤンになっている……。私の名前も、いつかコンノンになるのだろうか。そこまで考えて、いやなんで私が同じくくりに入れると思ったんだ、と自分の頬に小さくパンチする。
 そして、帰り支度が終わっていないふりをしながら彼らが教室を出たのを見計らい、とぼとぼとひとりで図書室へと向かった。
「ねー、見た? 入学早々、男をふたり引き連れて歩いて、やっぱり美人ってだけですごいね」
「さすがだよね、カースト上位って感じ」
 廊下を歩いていると、ついさっき坂木くんたちが歩いていたこともあって、ヒソヒソ話をしている他のクラスの女子の声が聞こえた。
 違うんです。三人とも真面目に委員会の仕事をしにいくんですよ。
 心のなかでそう言うも、この人たちにあえて伝えるのは微妙な気がして、うつむきながら通り過ぎる。
 入学早々……か。それを言うなら、入学早々、こんなにあることないこと陰口を叩かれたり、ヤバい先輩に言い寄られたり、神谷さんは大変だな。