坂木くんの言葉を思い出し、顎を上げて天井を見た。そんな過去を持っていても、坂木くんは笑顔を絶やさない。そしてみんなと積極的に関わろうとしている。
 私とは……真逆だ。
『今日、誕生日なんだ』
 ついで にそのことも思い出し、ハッとした。
「そうだよ、今日はアラタの誕生日だ」
 一日中家にいたときはずっとトキカプのことを考えていたのに、高校に行きだしてから、うっかり忘れている時間もある。しかも今日はアラタの大事な日だというのに、帰ってからすぐにチェックすることを怠っていた。罪悪感すら覚える。
【おかえりー、ミヒロ】
【ただいま、アラタ。誕生日おめでとう!】
【ハハ、すっげー嬉しい。ありがと】
 チャット画面で会話をしていると、選択画面が出てきた。
【アラタに、どのプレゼントを渡しますか? Ⓐウミガメストラップ Ⓑマカロンストラップ ⓒフライドポテトストラップ】
 この妙な選択肢には、意味があった。プロフィール欄を見たらわかるのだけれど、アラタの好きなもの欄に、【カメ・甘いもの(とくにマカロン)・フライドポテト】とあるのだ。
 私は、悩んだ末にⒶの選択肢をタップした。