オセロを再開した坂木くんの伏せた瞳を見ながら、私の胸はじんわりと熱くなった。いつも明るくて悩みがなさそうに見えるけれど、彼の思いやりの深さの理由がわかった気がする。そして、きっと強さも持っているのだろう。
 そのとき、眼鏡をかけた女子生徒がひとり、図書室に入ってきた。坂木くんと私はオセロをはさんで向かい合っていた体勢を正面へパッと戻し、背筋を伸ばす。女子生徒はちょっとビクッとしたけれど、本棚のほうへ進み、本を選びだした。
 すると、奥から椅子を引く音が聞こえ、カウンターのほうへ足音が近付いてくる。神谷さんと大田くんが現れ、ふたりともスマホを手に持っていた。
 そうだ、このふたりが同じ図書室内にいたってこと、忘れていた。
「写真の準備を」
 仏頂面の大田くんがそれだけ言って、私は思い出した。そういえば、本の貸し借りをしているところを写真で撮りたいと言っていたことを。
 女子生徒が二冊本を手に取ってカウンターまで来ると、私たち四人がいることで少し怪訝そうな顔をした。それを見た坂木くんが、すかさず説明を始める。