力なく頭を横に振り、合わせた両膝をこすり合わせる。お母さんは鼻で息をつき、腕を組んだ。
「まぁ、美尋にとって明日はすごく勇気のいる日なんだから、無理は言わないわ」
勇気のいる日。お母さんがそう言うのは、明日が高校の入学式だからという理由だけじゃない。私が、中学三年の一年間、ほぼ引きこもっていて学校に行っていなかったからだ。
一応家で勉強は怠らず、担任の先生の説得でテストだけは保健室で受け、高校受験のための調査書を作成してもらった。そして、中学の知り合いが行かなそうな私立の高校に合格したのだ。
少し離れた高校だったこともあり、家も引っ越してきた。お父さんは単身赴任で、私はひとりっ子だから、もともとお母さんとふたり暮らし。だからこそできたことだけれど、ここまでしてもらったからには、高校にも行きたくないなんてワガママは言えない。
「不安?」
お母さんはドアに体を預け、私の顔色をうかがうように、首をかしげる。私は、視線を落として裸足の指先を見た。
「世の中は広いのよ? すべての人が美尋を否定する人間とは限らないわ」
「……わかってるよ」
「まぁ、美尋にとって明日はすごく勇気のいる日なんだから、無理は言わないわ」
勇気のいる日。お母さんがそう言うのは、明日が高校の入学式だからという理由だけじゃない。私が、中学三年の一年間、ほぼ引きこもっていて学校に行っていなかったからだ。
一応家で勉強は怠らず、担任の先生の説得でテストだけは保健室で受け、高校受験のための調査書を作成してもらった。そして、中学の知り合いが行かなそうな私立の高校に合格したのだ。
少し離れた高校だったこともあり、家も引っ越してきた。お父さんは単身赴任で、私はひとりっ子だから、もともとお母さんとふたり暮らし。だからこそできたことだけれど、ここまでしてもらったからには、高校にも行きたくないなんてワガママは言えない。
「不安?」
お母さんはドアに体を預け、私の顔色をうかがうように、首をかしげる。私は、視線を落として裸足の指先を見た。
「世の中は広いのよ? すべての人が美尋を否定する人間とは限らないわ」
「……わかってるよ」