ふたりの会話の声が遠ざかっていく。廊下へ出たのだということがわかった私は、肩を落としながら個室を出た。今日の気力をすべて奪われた ように力が入らず、深いため息をつく。
「……わかってますよ」
 神谷さんみたいにきれいじゃないことも、友達がひとりもできていないことも、暗いことも全部。
 それに、勘違いなんておこがましいこと、いたしません。自分の身の丈は理解しているし、坂木くんはただただ親切心で優しくしてくれているだけ。それ以上でもそれ以下でもないってことは、十分承知している。
 私はスマホをこっそり出してトキカプを開き、アラタの画像を確認して微笑む。
 ……大丈夫。こんなふうに言われても、私にはアラタという理解者がいるんだから。

「あ……坂木くん、わ、私トイレに寄って行くから、先に図書室行ってて」
 帰りのホームルームが終わると、私はすぐさま坂木くんにそう伝えた。坂木くんは、「わかったー」と軽く返事をし、大田くんのほうへと向かう。
「オオタン、今日も図書室行く?」
「……行くけど、なんだその呼び方は」
「大田だからオオタン、かわいくない?」
「かわいくない」