「うん、高飛車そうだから、誰も寄りつかないんじゃない?」
「ひとりといえばさ、えーと……名前覚えてないけど、坂木っちの前の人 も友達いなそうだよね」
 “坂木っちの前の人”と聞いて、心臓が跳ねた。
「あー、うしろ姿だけ神谷音羽とそっくりのかわいそうな人?」
「そうそう、神谷さんの下位互換」
 ……ひどい。私のことだと確信して、便座に座ったままうなだれる。
 女子の陰口って、本当にえげつない。中学のときもそうだった。少しネタになることがあればそれをネチネチといじって、裏でみんなで笑うんだ。
「あの人、声が小さいし、なにより暗いよね?」
「わかる。それなのに、坂木っちは優しいから話しかけてあげてさ。偉いよね、ホント」
 あぁ、しかも、そこまでわかっているということは、同じクラスの女子だと確定した。
「坂木っち、マジでかっこかわいいし、性格も神だし、無敵じゃない?」
「ねー。前の人、うっかり勘違いしないか心配だわ」
「ホントそれ。絶対ありえないし」