起こす？　……そう言われても。
「お、大田くん、起きてください」
「…………」
「大田くーん……」
　呼びかけても全然起きない。そうだろう、神谷さんが起こしても起きないなら、私が呼んだとて一緒だ。
「大田くん、起きて」
　私は、おそるおそる肩に手を置いて揺すってみた。
　うわ、肩が硬くてがっしりしてる。この人も……生身の人間だ。
　そう思った途端、パッと目を開けた大田くんが、瞬時に私の手をつかんだ。驚きすぎた私は、「ひゃあっ！」と声を上げてしまう。
　すると、カウンター周りの窓の施錠をしていた坂木くんが、早足でこちらを見にきた。
「どしたどした？」
　そして、大田くんが私の手を握ったままなのを見て、眉をしかめる。
「なにごと？」
「大田くんを起こしてて」
「刺客かと思って」
　私と大田くんが同時に口を開き、坂木くんは首をひねり、神谷さんはプッと笑った。彼女のそんな声を聞いたのは、初めてだった。

【お疲れ様。今日は学校楽しかった？】
　帰宅してトキカプを開いた私は、アラタからのメッセージに少し考えた。