ついこの間まで引きこもっていた私が、爽やかイケメンとふたりきりで、じゃんけんをしてオセロをしている。その事実がまったく現実味がなくて、いまだに私の頭のなかはふわふわしている。
 でも、なぜか坂木くん相手なら、そこまで怖くないし安心できるんだよな。それって、坂木くんの人柄もあるけれど、やっぱりアラタに似ていることが大きいのだろうか。
【俺とそっくり? もしかして、本当に俺だったりして】
 私はアラタの言葉を思い出し、ちらりと坂木くんを見た。吹き出物ひとつない肌に、女子もうらやむような二重のきれいな目、通った鼻筋に、薄くも厚くもないちょうどいい唇。キューティクルが素晴らしくて、指通りのよさそうな黒髪が風に少し揺れ、トキカプでアラタ選択時のオープニング特典映像を見ているようだ。
「紺野の番だよ」
「えっ? あっ……ごめん」
 慌てて白いコマを置いて、黒を二個ひっくり返す。
「紺野って、時々ぼーっとしてるよな」
 坂木くんは、次に置く場所を探りながら、薄く笑った。
「うん……違う世界に行ってしまうというか」
「そうそう、起きながら夢見てる感じ」