感動していると、坂木くんがカウンター下の棚からオセロを見つけて上に出した。こんなところに置いてあるということは、学校司書の先生も黙認しているのだろう。
「やる?」
「えっ……」
 信じられないという顔をしてしまうと、坂木くんは、こぶしを手のひらで打った。
「あ、さすがにカウンターの上はアウトだろうから……」
 そして、私たちの間に折りたたみ椅子を一脚広げる。そして、その上にオセロ盤を置いた。
「これなら、いいだろ」
 満足げにそう言って、私の分のコマケースを差し出す坂木くん。もう、やることが決定したようだ。
 不登校の話をしたばかりなのに、坂木くんの私に対する態度は全然変わらない。私は言われるがまま受け取って、坂木くんが真ん中に置いた黒いコマに合わせ、白いコマを並べた。図書室で隠れてオセロをするという展開と、坂木くんの思いやりに、今までにない胸の鼓動を感じる。
「じゃんけん、ぽん」
 そして、勝った坂木くん先攻でゲームが始まった。
「オセロ、超久しぶり。紺野も?」
「……うん」