このままじゃダメだと思って、勉強に本腰を入れたこと。細くなった太ももを見て、部屋の中でできる簡単なストレッチや筋トレを始めたこと。でも、入学できたとして、うまく高校に馴染めるかどうか不安でたまらなくなり、お母さんにあたったり布団のなかで泣いたりしたこと。
 本当は、ずっと自分の部屋に閉じこもっていたほうが楽だし、傷付かないんだ。そんな本音を押し殺すために、自分で前髪を切った、あの入学前夜。
 ……うん、私は……頑張ってるんだ。そして、今も頑張っている最中なんだ。
 自分でも思うもん、よく高校に通えてるなって。本当は体力的にも精神的にもキツくて、すぐにでも音を上げてしまいそうなのに。
「…………」
 私は、震える心に口を固く結び、坂木くんを盗み見た。
 この人、やっぱりアラタじゃないかな? 言うことがいちいちパーフェクトだ。人を傷付けるようなことは絶対に言わないし、むしろ、私を楽にさせてくれるような温かい言葉をくれる。
「あれ? オセロがある」