しまった、送信してから気付いた。“アラタ”と打つところを、間違えて“サカキクン”とカタカナで打ってしまったことに。スマホ画面に坂木くんそっくりのアラタがいることで、混同してしまった。
【 “サカキクン”? 初めて出てきた名前だね。お友達?】
【ごめん、アラタと間違えた】
 そう打ちこむと、イレギュラーな返しだったからだろうか、しばらく返事がなくなった。
 でも、こうも話がスムーズななかで会話が止まると、まるでヤキモチを妬かれているように感じてまんざらでもない。ここまで計算しているアプリならすごいけれど、処理速度の問題だろう。
【そうなんだ。間違えたんだね】
 けれど、ニコニコマーク付きで返事がようやく返ってきて、拍子抜けした。
【その人、アラタとそっくりな人なんだ。現実世界のアラタみたい】
 そう入れると、また少し時間が空いて、
【俺とそっくり? もしかして、本当に俺だったりして】
 と返ってきた。
「え?」
 私はピタリと手を止める。そして、「ハ……ハハハハ」と、から笑いをした。
 だって、そんなことはあるはずないんだから。ありえないのだから。