神谷さんがそれを聞いて、ゆっくりうなずいた。そうだ、彼は大田くんだ。ていうか、坂木くんは、大田くんの名前も神谷さんの名前もすぐに出てきた。クラスメイトの名前を覚える速さに感服だ。
「広報委員会が終わって、こっちに来た」
「へぇ、そうなんだ。で? どうしたんだ?」
 坂木くんが、腰に手をあてて首をかしげる。そうか、大田くんも神谷さんも、広報委員なのか。
「広報委員会の新聞作りで、委員会紹介を頼まれたんだ。発行は七月だけど、ひとつひとつ委員会をまわって取材しないといけないみたいで」
「うわー、めん……いや大変そうだな」
「かなり面倒だ」
 大田くんは表情ひとつ変えずにそう言った。神谷さんも表情があまりないので、まるでアンドロイドが二体いるように見える。
 新聞作りか……。きっと、広報部の先輩たちが、一年生に面倒な作業を押しつけたんだろうな。大田くんと神谷さんに同情してしまう。私も、中一と中二のとき、続けて新聞作りの係をしていたから、大変さがよくわかる。