思わずぼそりとつぶやいてしまうと、目を丸くした坂木くんが時間差で噴き出す。
「ひでーな、俺死んでると思われてたの?」
「ち、違う、そういう意味じゃなくて、ちゃんと人間なんだなって思って」
「ハハ、やっぱ意味わかんない。紺野って面白いな」
 坂木くんに友達が多いのがうなずける。誰とも壁がなくて、素直で、よく笑う。簡単そうで私にはなにひとつできていないことだから、尊敬してしまう。
「ちょっといいか?」
「わっ!」
 委員会が終わったから、図書室では静かにしないといけないのに、坂木くんがうしろから肩を叩かれて大きな声を上げた。
「悪い」
 声をかけてきたのは、背が一八〇センチ以上はありそうな、ツーブロックヘアの一重の男子だ。高身長と強面が印象に残ってクラスメイトだというのは覚えているんだけど、名前までは出てこない。
 そして、その斜めうしろには、神谷さんの姿もあった。
「一年一組の図書委員で合ってるよな? たしか坂……」
「びっくりしたー。うん、合ってるよ、坂木坂木。えーと、そっちは大田だよな? うちのクラスの。で、うしろにいるのが神谷?」