私は、坂木くんのあまりの紳士っぷりに驚いていた。アラタならこう言うだろうな、という台詞すぎて、これが現実の世界なのかどうかも怪しく思えるほどだ。こんなふうに陰キャに優しいイケメンなんて、リアルではお目にかかれない。
 委員会の話し合いは、図書室の奥の自習スペースで行われた。学校司書の先生と三年の図書委員長から挨拶や説明があり、図書当番担当の日程表が配布される。
 昼休みは先生が貸し出し業務をしてくれるけれど、放課後だけ図書委員で運営するらしい。一週間交代、クラスごとでその当番を任されるということだ。なにも考えていなかったけれど、図書委員にはそんな仕事があるんだな。
 話し合いが終わって解散となり、立ち上がった坂木くんが声をかけてくる。
「俺らが一番 だね」
「……うん」
 私も遅れて立ち上がり、うなずく。そうだ、私たちは一年一組だから、トップバッターだ。来週から一週間、放課後の五時半までずっと、坂木くんと一緒にふたりきりで……。そう思うと、冷や汗をかいてきた。
「あ……あのさ、私、ひとりで入れるよ?」
「え? なんで?」