放課後を告げるチャイムが鳴るなか、坂木くんと一緒に図書室へと向かう。廊下に出ると、私は真横に並ばないように半歩うしろを歩いた。周りからどんな目で見られているんだろうかと、気が気じゃないからだ。
「紺野ってさ、あんまりしゃべらないよね? 誰とも」
 しばらく無言で進んでいると、渡り廊下に入ったところで坂木くんが尋ねてきた。私は、うつむきながら口を開く。
「と、友達……いないから」
「同中の人はいないの?」
「うん」
「もしかして、他のクラスにも?」
「……うん」
 そして、住んでいる場所を聞かれたから、だいたいの住所を教えた。引っ越してきたことで同中の人がいないのだと話し、引きこもりだったことは伏せた。
 坂木くんは顎に手をやり、「そっかー」と上を向く。
「じゃあ、寂しいな。他にも同じような人はいるかもしれないけど」
「……まぁ」
「とりあえず、なにか困ったことがあったら言って。前後の席だし、同じ委員会のよしみってことでさ」
「う……うん」