笑っていたい、君がいるこの世界で

「紺野も暇なら、一緒にいい?」
「うん。大丈夫だよ」
 正直言うと、ちょっとだけ緊張している。なぜなら、坂木くんとふたりだけで話すのは、かなり久しぶりだからだ。あの土曜日に言い合いをしてしまってから、そのことについては互いに触れずにいた。
 ふたりだけで歩く廊下は、当番初日以来だ。周りの目を気にしてずっと時間差で図書室へ向かっていたから、今、不思議な気分だ。
 よく周りを見たら、みんなそこまで私たちのことを見ていない。一部の噂好きな人にとらわれて、本当に自分は自意識過剰だったんだなと思い知る。
 図書室に着くと、以前と同じようにカウンターの中に並んで座った。誰もいないみたいで、坂木くんが真ん中の椅子にオセロを準備しだしたので噴き出してしまう。
「するだろ?」
「うん」
 真ん中に白と黒を並べて始めるオセロは、小気味いい音でコマがひっくり返されていく。穏やかな時間と空気が流れる図書室。私は、自然と坂木くんに話しかけていた。
「坂木くん、ごめんね。あの土曜日……観覧車に乗った日」
 坂木くんは、どこに自分のコマを置こうか腕組みをして考える仕草のまま、口角を上げる。