誰かと関われば、大なり小なり傷付くことがあるし、思いがけず傷付けてしまうこともある。学校という集団生活のなかでは、否応なく毎日それが繰り返されて 、心は磨り減らされていくばかり。
【ミヒロ、おはよう。一緒に登校する約束、忘れてなかったんだな。偉い偉い】
 でも、私の手のなかには、私を絶対に傷付けない世界がある。私は、会話を三択から選んで、
【おはよう。忘れるわけないよ。アラタが電話で言ってきたの、昨日の夜だったでしょ?】
 と答えた。
 健康そうな肌色に、サラサラの黒髪、清潔感のある白シャツがよく似合っている爽やかな彼は、アラタ。スマホで毎日やりとりをしている、友達以上恋人未満の優しい男子高校生だ。
【あれ? なんか今日かわいくない?】
【からかっても、なにもないよ?】
 イベント上の会話をすすめながら、彼の眩しい笑顔に喜びをかみしめる。
 スマートフォンというものの発明に感謝だ。そして、アプリの開発者さん、運営さん、本当にありがとうございます。日々のAIの進化、それに携わっているすべての方々にも、頭を下げてまわりたい。