「映画の前後はどうする? 私、あんまり遊びに出かけたことないんだけど、紺野さんはしたいことある?」
「私もあんまりないからわからないんだけど……みんなは買い物とかカラオケとか行くのかな」
「カラオケは無理!」
 すると、急に神谷さんが怖い顔をした。
「私、音痴なの。音羽って名前だから上手だって決めつけられるんだけど、本当に下手なの。“音”が名前に入っているからって、美声だとか歌がうまいって決めつけないでほしいわ、ホント」
 力説する神谷さんに噴き出しながら、うなずく。
「わかる。私も名前に“美”が入ってるから、ごめんなさいって感じだもん」
「それはまた別の話よ」
 そこから、美しさとはなにかという神谷さんの持論が展開された。神谷さんは、博学だし、いろんなことをけっこう深く考えているから、驚かされることも多い。面白い映画も紹介してくれるし、話していて話題が尽きることがない。
 最近では、お昼ご飯だけじゃなく、体育のペア作りとか、教室移動のときも一緒だ。友達をたくさん作りたいとは思わない。全員から嫌われたくないとか、浮きたくないなんてことも、もう思わない。