「はあ? ちょっと待て、初耳だぞ。それにそんなそぶりは全然なかったじゃねーか」
 なぜか、江藤くんが怒っている。
「しつこくて押しが強いヤツが苦手っぽいから、気長に近付く予定」
「オオタン、本人の前で言っていいのか? それを」
 坂木くんにツッコまれ、大田くんは、「あ、ホントだ」とのん気な様子。神谷さんは、みるみるうちに赤くなり、握りこぶしを前に出す。
「人任せにしたり、こういう場でそういうこと言ったりする人なんて、ね、願い下げだわ」
「うん、いいね。俺、怒られるの好き」
 まるで響いていない大田くんは、飄々としながら口角をわずかに上げる。彼の笑った顔を初めて見た。神谷さんの赤面を見たのも初めてだし、なんだか面白い。私はクスクス笑いながら、「ウノ」と宣言した。
「なんか、俺に対する反応と違って、ショック……」
 反対隣からそんな小声が聞こえたけれど、ウノは続く。
「あ、あがり!」
 ほどなくして、私が一番にあがることができた。ちょっと声を大きくしてしまい、四人が瞬きをする。
「紺野、いい声出たな」