『紺野さんといると、いろいろ話せる。受け入れてくれる雰囲気が出てるからかな』
『そうよ、紺野さんも悪い!』
『私が信用できなかった? 引きこもりだったって知って、笑うとでも思ったの? そんなわけないじゃない!』
 肯定だけでも否定だけでもない、相手の心の底からの言葉。その熱量と、行動。
 だからこそ、私の心と体も動いたのかもしれない。そして、自分が本当になりたい自分がどういう人間なのか、考えるきっかけになったのかもしれない。
【そのままでいいんだよ】とアラタは言った。だけど……。
「なりたい自分……」
 つぶやいた私は、自分の部屋を出て、お母さんがいる台所へと向かった。
「お母さん。私、髪切ろうと思う」
 うしろ姿にそう声をかけると、菜箸を持っているお母さんが横顔で振り返り、口角を上げた。
「いいんじゃない?」