昼休憩の鐘が鳴ってすぐ、朝に私にＬＩＭＥを見せた女子が声をかけてきた。お弁当をバッグから取り出そうとしていた私は手を止め、無理に笑顔を作る。
「あぁ、うん。ごめん、急に具合が悪くなって」
「びっくりしたよ。私のせいかと思ったじゃん」
　その子は、大げさに胸に手をあてて声のボリュームを上げた。そのことで近くの生徒がこちらにまた注目する。一瞬体が強張った私は、「ハハ」と受け流そうとした。
「で、結局この噂、本当なの？」
　“噂”という言葉は、なんでこんなに人を引きつける力を持っているのだろうか。そのひと言で、こちらを見る人数が増えた。
　四限目が終わって大きく伸びをしている人、友達と学食へ向かおうとしている人、お弁当袋を持って席をくっつけようとしている人。みんなが、なんとなく好奇の色を滲ませた目を向けてくる。もしかしたら、ＬＩＭＥが回ってきた人たちなのかもしれない。
「あぁ……えっと……」
　冷たい汗がこめかみを伝う。心臓の鼓動も速まってくる。私は、何度も生唾を飲んだ。愛想笑いで上げた頬と口角が痛い。