聞き間違いかと思って黒板を見ると、やはり“図書”と書かれた下に、“紺野・坂木”と続いている。ごくんと生唾を飲むと、またうしろからツンツンと肩をつつかれた。
「よろしくな、紺野」
 あぁ、爽やかだ。まるでアラタと同じような声と口ぶりでそう言われ、
「う、うん。よろ……しく」
 と、言葉に詰まりながら返事をする私。
 ある意味、まったくわからないクラスメイトと組むよりよかったのかもしれない。坂木くんは親切で優しいと、すでに知っているからだ。それに、アラタに似ているし……。
 ……いやいや、だから違うってば。
 ちょっとよこしまな気持ちになりそうになった私は、姿勢をぴんと正した。

「ねぇ、ねぇ、神谷さん」
 廊下をトイレへと歩いていると、うしろから声をかけられ、横から覗きこまれた。
「え? あれ? 誰? 神谷さんじゃねーじゃん。まぎらわしー」
 そう言って、謝りもせずに立ち去る男子。あれはたしか、クラスメイトのお調子者、江藤くんだ。同じ教室なのに、彼は私のことを知らないらしい。