笑っていたい、君がいるこの世界で

 眼鏡をかけたふくよかな女の先生が、優しく聞いてくるけれど、私は体を起こしてベッドに腰かけたまま、なんの返事もできずにいた。
「無理はしなくていいから、授業に戻るにしても帰るにしても、とりあえず教室に行きなさいね。帰るときは、担任の先生にちゃんと言うこと」
 先生は、職員室に用があるということで、そんな言葉を置いて保健室を出ていった。ひとりになった私は、先生が出ていった入口をじっと眺める。
「あ、いた」
 すると、廊下からこちらを覗いてきた坂木くんが見えた。そちらを見ていたことで、ばっちりと目が合う。
「なん……」
 なんで坂木くんが?
 見間違えたかと思った私は、何度も瞬きをする。けれど、先生がいないことを確認した坂木くんは、ツカツカと中に入ってきた。そして、ベッドのところまできて、入口を振り返る。
「カミヤン、早く」
 そう言うと、神谷さんが遅れて顔を出し、すこしバツが悪そうにこちらまで来た。私はベッドに腰かけたままで、シーツを握る手に力を入れる。
「どうして……? どうしたの?」
 おそるおそるふたりを見上げると、坂木くんが先に口を開いた。