笑っていたい、君がいるこの世界で

 ……一緒だ。あの日とまったく一緒。なんだなんだという野次馬の視線。そして、私が吐いたら、みんな顔をしかめていっせいに離れたんだ。
『うわー……ヤバ』
『悲惨なんだけど』
『私だったら無理』
 そう……廊下でひとりうずくまってえずいている私に、駆け寄ってくれる人はいなかった。同じ友達グループだった女子とも目が合ったけれど、すぐに視線を逸らされたんだ。
「……ぐっ」
 吐きたくない。吐くわけにはいかない……!
 必死に口を押さえて走り、すんでのところで女子トイレの個室に入った私は、すぐさま鍵を閉めて便座を上げる。けれど、吐こうとしてもなにも出てこなかった。大きく開いた口からはうめきと唾液だけが垂れ、どうしようもない気持ち悪さは喉の奥から出ていかない。
「うぐ……」
 喉もとの苦さと痛さに、涙が出た。壁に手をつき、唇を震わせる。
 なんで? なんで誰も私の過去を知らない学校に来たのに、こんなに早くみんなに知れ渡るの? このことは、この学校では坂木くんと江藤くんしか知らない。坂木くんは人に言うようなタイプじゃないし、江藤くんは昨日言わないって約束してくれた。それなのに……なんで?