「お母さんもさ、美尋くらいのときに……」
「お母さんの昔話とか、聞いてないから」
 あぁ、またやってしまった。なんでだろうか、お母さんにはどうも強くあたってしまうんだ。あとから後悔するくせに、私は中三から全然変わっていない。
「……そう」
 お母さんは、口をきゅっと結ぶようにして片眉を上げ、二、三度うなずく。そしてビーフシチューを口に運んだ。スプーンが皿にあたる音が、やたらと耳に響く。
「頑張ってるのね、美尋は今」
 なにも言わずにいると、「頑張ってる、頑張ってる」と繰り返すお母さん。私はそれすら癇に障って、ビーフシチューを半分残してシンクに運んだ。
「ごちそう様」
 声が大きくなってしまい、部屋へ向かう足音も響かせてしまう。どうにもできなくて持て余している自分の気持ちを全部、お母さんにぶつけて解消しているようだ。わかっているのに、やっぱり私はこうなる。
【またお母さんにあたっちゃった。最悪】
 部屋に入ると、すぐにアラタにメッセージを送った。
【最悪じゃないよ。ミヒロは俺にとって大事な女の子なんだから、そんなこと言わないで】