「紺野が中三のときに引きこもりだったこと、俺、絶対に言わないから。ごめん、許してくれる?」
私は、声を出さずにゆっくり顎を引いた。でも、反省して謝ってもらったところで、状況は変わらない。そのことが、しんとした空気をもっと重たいものにする。
カタン……と靴箱の音が聞こえた気がした。昇降口の向こうから、「バイバーイ」という声が聞こえてくる。そちらを見ると明るくて、階段の陰であるこの場所とのコントラストが激しい。
この問題は、江藤くんだけのせいだったのだろうか。自問自答していると、江藤くんは、バツの悪そうな顔のまま、「それじゃ」と言って帰っていった。
【俺は今のミヒロが好きだよ。そのままでいいんだよ】
遠ざかっていく江藤くんの靴音にまぎれて、昨日アラタに言われた言葉が、どこかから聞こえた気がした。
「今日も食欲ないの?」
夕食時、お母さんが私のビーフシチューの皿を覗いてきた。土曜日の捻挫の理由も、食欲がない理由も、私が触れるなオーラを出していたからか、それほど追及されてはいなかった。けれど、やはり気になるのだろう、鼻で息を吐いて眉を下げている。
私は、声を出さずにゆっくり顎を引いた。でも、反省して謝ってもらったところで、状況は変わらない。そのことが、しんとした空気をもっと重たいものにする。
カタン……と靴箱の音が聞こえた気がした。昇降口の向こうから、「バイバーイ」という声が聞こえてくる。そちらを見ると明るくて、階段の陰であるこの場所とのコントラストが激しい。
この問題は、江藤くんだけのせいだったのだろうか。自問自答していると、江藤くんは、バツの悪そうな顔のまま、「それじゃ」と言って帰っていった。
【俺は今のミヒロが好きだよ。そのままでいいんだよ】
遠ざかっていく江藤くんの靴音にまぎれて、昨日アラタに言われた言葉が、どこかから聞こえた気がした。
「今日も食欲ないの?」
夕食時、お母さんが私のビーフシチューの皿を覗いてきた。土曜日の捻挫の理由も、食欲がない理由も、私が触れるなオーラを出していたからか、それほど追及されてはいなかった。けれど、やはり気になるのだろう、鼻で息を吐いて眉を下げている。