その硬い声と表情に、私は立ちすくむ。
「そういうつもりだったんじゃないけど……」
「罪滅ぼし？」
「違う！」
　神谷さんは、鼻血がついた顔をそのままに、私をまた見つめる。本心を見抜くようなその目に負けないよう、握った拳に力をこめた。
「神谷さんが誤解されてるのが、嫌だったの」
「どうでもいいじゃない。言いたい人には言わせとけばいいし。それに、紺野さんには関係のないことでしょ？」
　そう言われたら、もうなにも言い返すことができない。私は、口を歪ませながら結んだ。手首が痛んだ気がして、包帯の上から反対の手で押さえる。
「……前に言ったでしょ？　私といると、周りから嫌なこと言われるって」
　神谷さんは、視線をその手へとゆっくりと落とした。
「私はひとりでいるほうがいいの。そのほうが、傷付かないし、傷付けないから」
　“傷付かないし、傷付けない”……その言葉は、私もしょっちゅう考えることだった。引きこもり中に、そして人と衝突したときに、ひとりのほうが楽なのだと自分に言い聞かせてきた。つい先日もそうだった。
「手首……ごめん」