周りのヒソヒソ声が、少しずつ大きく、冷ややかになっていく。そして、クスクスと笑うような声も聞こえた。先生は、ちょうど他の先生に呼ばれて体育館にはいなかった。
「自業自得。男遊びばっかりしてるから、バチがあたったんじゃない?」
 誰が言ったのかはわからない。けれど、笑い交じりのその言葉を聞いて、私は思わず前に出た。
「わっ、笑わないで!」
 そこへ、男子のほうからバスケットボールが転がってくる。坂木くんが、たまたまそのボールを拾いに走ってきたのが、視界の隅に映った。
 今度は女子みんなの視線がいっせいに私へと集まる。神谷さんも私を見ている。
「……あ」
 空気を読み間違えたような、白々しい沈黙が流れた。勝手に熱くなってしまった私は、さぞ滑稽に見えているのだろう。みんなは、異質なものを見るような怪訝そうな顔をしている。
 数歩踏みだした足が、沼にはまってしまったかのように重くなる。けれど、私は笑いそうになる膝を動かし、神谷さんのもとまで歩いた。
「……大丈夫? 保健室に行こう?」