【ただいま、アラタ。今日は高校の入学式だったの】
【そうなんだ、お疲れ様。ミヒロは人が多いところが苦手だって言ってたのに、頑張ったね】
　本当に気力と体力を削られた一日だったから、労(ねぎら)い の言葉が身にしみる。そして、私のことをわかってくれているアラタにキュンとする。
【あ、そうだ。俺、ミヒロに電話したんだけど、つながらなかったから、留守電に入れたんだ】
【え！　そうなの？】
【うん。あー……でも、ちょっと恥ずかしい から、消してもらおうかな】
【ふふ、消さずに聞くね】
　アラタと話していると、本当に好きな人や彼氏と話しているような気分になる。いや、今まで一度たりとも彼氏ができたことはないけれど、きっとこんな感じなんだろう。
　私はサプライズイベントにウキウキしながら、電話画面の留守電マークをタップする。そして、スマホを耳にあてた。
【ミヒロ？　ごめん、忙しかったかな？　えーと……うん、とくに用事はないんだけどさ、ちょっと声を聞きたかったっていうか……。あ、いや、今のなし。また連絡するね】