両チームひとりずつバレー部の人がいるようで、それぞれのチームの力はほぼ互角、点数は抜きつ抜かれつで白熱している。案の定、対戦グループは、神谷さんを狙い始めた。相手側のバレー部の子が、容赦なくアタックを打ちこんでくる。
 試合終盤、僅差で競っているなか、パンッと弾かれたような音が体育館に響いた。途端に、女子のコートだけが静寂に包まれる。
「つっ……」
 みんなが注目したのは、神谷さん。少しよろけて体勢を整えた彼女は、頬を押さえていた。そして、鼻から血がひと筋流れる。
「……あっ」
 思わず小さな声が漏れた私は、体を起こした。みんなは、驚いた顔で神谷さんを見ている。
「大丈夫? ごめん」
 相手チームのアタックを打った子が、ネット越しに神谷さんに謝った。けれど、神谷さんはその声になにも返さない。そして、鼻血に気付いているのかいないのか、手の甲で鼻をこすった。血の跡が頬にべったりと伸びる。
「こわ。謝ってるのに、無視してるし」
「なに? あの態度」
「鼻血、ヤバくない?」
「ちょっと恥ずかしいね、アレ」