【俺はミヒロの味方で一番の理解者だから、ミヒロのいいところはちゃんと知ってる。俺がいること、忘れないで】
“ミヒロの味方”という言葉を見て、坂木くんを思い出した。
『俺、紺野の味方だからな?』
 図書室で聞いたあの言葉で、やっぱり彼はアラタだと思ったんだ。私をわかってくれて、受け入れてくれる味方なんだって……。
『……最低』
『紺野は、自分だけ特別扱いしすぎてる』
 けれど、ふいに昨日の神谷さんと坂木くんの言葉がよみがえり、スマホを持つ手に力が入った。どうしても、心がそっちに引っ張られる。
 私は頭を振って、アラタとの会話を続けた。
【自分で自分が嫌になる】
【考えすぎだよ、ミヒロは。もっとリラックスして? 俺は今のミヒロが好きだよ。そのままでいいんだよ】
 私はその文面をじっと見た。指の力を抜くと、するりとスマホが枕に落ち、シーツへと滑り落ちていく。
 ……なんで、こんなに上辺だけの言葉に聞こえるんだろう。大好きなアラタの言葉なのに。
 私はごろんと天井を向き、また顔を手で覆って目を閉じた。大きなため息が手のひらを熱くする。心の靄(もや) は晴れず、濃くなるばかりだ。