画面の中のアラタが、変わらない笑顔で私を迎える。昨日の坂木くんの怒った表情とは全然違う。
【大丈夫? なにかあった?】
【うん、ちょっと……】
 そう濁して伝えようとし、ふと思い出した。以前、学校に行けなくなったときや、お母さんと揉めたとき、アラタに気持ちを話したことで、心がふっと軽くなったことを。アラタの優しい言葉で、自分を労(いた)わる ことができたことを。
【友達と喧嘩してしまって、悩んでるんだ】
 私は、打ちなおした文面を送信した。寝返りをうって、壁向きにスマホを持つ。
【そうなんだ。つらいね】
【うん、ずっとそのことが頭から離れなくて】
【俺が今ミヒロの近くに行けたら、慰めてあげられるのに】
 坂木くんの顔をしたアラタが、歯の浮くような台詞を言う。いつもなら嬉しくてスクリーンショットをしたいくらいなのに、なぜだろうか、そんな気持ちにはならなかった。
【どうすればいいんだろう……】
 私は、心の底からの声を送信した。すると、数秒後にポンッと返信が来る。
【ミヒロは間違ってないから、大丈夫だよ】
【……そうかな】