ここ数年出したことのない大声と、走ったことのないスピード。足がもつれそうになりながらも、みんなの注目から逃げて、逃げて、逃げまくる。
 せっかく仲よくなった彼女を、裏切ってしまった。あんなに優しくしてくれた彼に、ひどい言い方をしてしまった。せっかく高校からやりなおそうとしていた自分を、台無しにしてしまった。
「うっ……」
 走りながら、顔をしかめる。こらえきれなかった涙が、風で目尻から飛んでいく。
「ううっ、うー……」
 私は、何度も目をこすり、嗚咽に咳きこんだ。体力がないせいで息が切れ、途中で何度も歩きながら、それでも少しでもさっきの場から離れたくて、走りながら帰ったのだった。



 疲れた。
 翌日日曜日 の朝。起き抜けからそう思った私は、腫れた目を掛け時計へと向けた。朝七時半。休みだからゆっくり寝ていてもいいのだけれど、体が学校に慣れたからなのか、嫌でも目が覚めてしまう。