すかさず、坂木くんはそう言った。江藤くんの強引な提案にひやひやしていた私は、ホッと胸を撫でおろす。すると、今度は大田くんが小さく手を上げた。
「江藤、俺と乗ろう」
 江藤くんは一瞬表情を凍りつかせたけれど、しぶしぶ「わかったよ」と答える。そして、ふたりは私と紺野さんのうしろに並んだ。私たちの順番までは、あと三組ほどだ。
「あ、今のうちにさ、連絡先交換しない?」
 江藤くんがポケットからスマホを取り出し、唇を軽くとがらせた。ずっと機会をうかがっていたのかもしれない、精一杯さりげなさを演出している。そして、また、みんなが返事をするのを待たずに、話を進めた。
「紺野と神谷さんは交換してるんだよね?」
 江藤くんに聞かれ、私と神谷さんはうなずく。昨日映画の約束をしたときに、もしもなにかあったときのためにと交換していたからだ。
「じゃあさ、俺、紺野と交換済みだから、俺がグループ作って招待しようか? あ、そうだ、坂木も紺野の知ってるから、坂木経由でもいいけど」
 すると、順番が来るまで一緒に列に並んでいた坂木くんが、首をひねった。
「俺、知らないよ。紺野の連絡先」