「……それは、私がいい人間ならでしょ?」
 坂木くんは、足をゆっくり止めて私を見た。
 私は、坂木くんみたいにできた人間じゃないんだ。大勢から好かれている人間は、大勢に埋もれてじっとしておきたい人間の気持ちなんてわからない。
「紺野は悪い人間なの?」
 薄く微笑んだ坂木くんに、なにも返せない。今日ずっと私に付きまとっている罪悪感なんて、到底説明できることじゃなかった。
「おーい! 遅いぞ、ふたり」
 観覧車に着いた江藤くんが、手をぶんぶん振りながら呼びかけてくる。私たちは、小走りで三人のいるところまで急いだ。観覧車入口の前には、数組の列ができている。
「別れて乗ろうぜ。神谷さんは、俺と」
「え、絶対嫌だ」
 ずっと江藤くんについてこられて、神谷さんはもううんざりなのだろう。すぐに断り、私の横に来た。
「私、紺野さんと乗る」
「え……?」
 驚いていると、江藤くんが口を開く。
「でも、紺野は坂木と乗るんだよな?」
「あ、俺、高所恐怖症だから、パス」