その言葉に、私の心臓が跳ねた。嫌な汗がこめかみを伝い、わずかに開いた唇を閉じて生唾を飲み、また開く。
 江藤くんの目は、“交換条件だからな”と訴えかけてくるような目だ。私の返事はもう、決められている。
「うん……い、一緒に行こうかな」
「よっしゃ! 決まり!」
 私の返事を最後まで聞き終わらないうちに、江藤くんはガッツポーズをした。坂木くんも神谷さんも、驚いたような顔をして私を見ている。大田くんだけが欠伸をしていた。
 ……そうだよ。今からの数時間をやりきれば、交換条件は終了するんだ。こうして一緒に過ごすだけでいいんだし、それ以上なにか協力することを求められているわけでもない。みんな、ただの偶然だって思っているんだから、私もそのつもりでいればいい。
 罪悪感からくる動悸をおさえるように、自分に言い聞かせる。男子たちはすでに観覧車がある方角へ歩きだしていて、私と神谷さんもそれに続いた。足が重たくて仕方ないけれど、もう行くしかないんだ。
「紺野さん、無理してない?」
 神谷さんが小声で聞いてきた。私は笑顔を作って、首を横に振る。