それに、昨日の帰りの坂木くんとのいざこざも、胸に影を落としたままだ。今日、この映画を見たあとに会うかもしれない。そう思うと、ため息が出る。
 映画は、二時間ないくらいで終わった。ラブコメディだけれど、途中で女同士の激しい喧嘩シーンがあったり、思わずほろりとくるところもあったり、もちろんイケメンとの恋にキュンキュンするところもあったりと、かなり満足のいく内容だった。
 意外だったのは、映画を見るときの神谷さんの反応だ。「わっ」とか「え?」とか「嘘」とか、ちょこちょこ小声をもらしていた。それがかわいいというか、学校にいるときよりも身近に感じて、微笑ましかった。
「面白かった!」
 見終えて通路を歩きながら、神谷さんが目力で訴えてきた。
「うん。とくに最後、エミリーがメグの彼氏に泣きながら頭を下げて“メグをよろしく”って言うところ、なんか感動しちゃった」
「私もぐっときた。あと、中盤のラブコメらしからぬアクションシーンもよかったわ」
「あそこ、スタントマン使ってなかったよね? あの動きは、本当にすごいと思う」
「そういうところまでちゃんと見てるのね、紺野さん。さすが」