翌日の土曜日。昼十二時半から始まる映画のため、いつもより早めに家で昼食を食べ、待ち合わせ場所に向かった。映画館に十五分前に着くと、すでに神谷さんが入口横の自販機のところで待っていた。
「ごめん、ま、待たせちゃって」
「時間には間に合ってるから、謝るのはおかしいわ」
 黒いキャップに大きめの白いシャツ、そしてスキニーデニム。制服以外の神谷さんは初めて見たけれど、かなりボーイッシュだ。私はというと、中三の初め頃に買った、カーキ色のシャツワンピース。そして、ふたりとも黒いリュックを背負っていた。
「ご飯、食べてきた? 神谷さん」
「うん、食べた。早く中に入ろう。私、映画館って久しぶり」
 神谷さんは顔には出ないものの、ちょっと楽しそうに見える。私の腕を引っ張って映画館に入り、飲み物はどうするだのポップコーンとチュロスはどちらがいいだの、あれこれ聞いてくる。
 私も映画館は小さいときに家族と来た以来で、久しぶりだ。神谷さんほどじゃないけれど、ちょっと浮き足立ってはいる。けれど、手に持っているチケットに目を落として、やっぱり残る罪悪感に気が重くなった。