結局右端の人が勝って、名前の昇順に自己紹介をしていく羽目になった。なんで、初日にして、こんなに試練が多いのだろう。周りに気付かれないように、またため息をつく。
「江藤淳一郎(えとうじゅんいちろう)です。高校一年、十五歳です。去年まで中学生やってました! よろしく!」
 おちゃらけて笑いを取りにいく人もいれば、
「大田陽(おおたよう)」
 ぶっきらぼうに名前だけ言って座る人もいる。そして、
「神谷音羽(かみやおとは)です」
 目を見張るほどの美人もいた。自己紹介云々よりも、その凛とした雰囲気に、みんなが静まりかえる。前髪は斜め分けだけれど、私と同じくらいの長さのツヤのある黒髪。透き通るような肌に、射るような目力。こんなふうに生まれてきたら、きっと悩みなんてなさそうだ。
 トキカプアプリのヒロインシルエットも、まさしくこんな感じ。長い髪を真似て自己投影していたけれど、きっと神谷さんみたいな人じゃなきゃ本当のヒロインにはなれないんだろうな。
「……次だよ」
 坂木くんに小声でそう言われ、うしろから肩をツンツンとされる。
 ……え?