「俺は留年したから学びなおせたけど、紺野は一年分自力で乗り越えて受験したんだもんな。それで合格するなんて、やっぱりすごいよな」
坂木くんは褒め上手だから困る。私は髪を耳にかけなおし、照れくささを逃がした。
「そんなことはないよ」
「いやいや、頑張ったんだな、ホント」
オセロのコマが返される小気味いい音を聞きながら、胸が温かくなる。“頑張る”だの“頑張った”だのって言葉は、上辺だけっぽくてあまり好きじゃなかった。でも、坂木くんに言われると、すっと心に沁みこんでくるみたいだ。
「そういうふうに言ってくれるのって、坂木くんだけだよ。だって、他の人はたぶん、引きこもりだったなんて白い目で見てくると思うし」
朝、江藤くんに言われたときに、クラス中、学年中に噂が広まる想像をした。その恐怖を思い出して、下唇を噛む。
「そう思う人もいれば、そう思わない人もいるでしょ」
「そう思う人のほうが多いよ」
「それ多数決させて、どうなるの?」
坂木くんは褒め上手だから困る。私は髪を耳にかけなおし、照れくささを逃がした。
「そんなことはないよ」
「いやいや、頑張ったんだな、ホント」
オセロのコマが返される小気味いい音を聞きながら、胸が温かくなる。“頑張る”だの“頑張った”だのって言葉は、上辺だけっぽくてあまり好きじゃなかった。でも、坂木くんに言われると、すっと心に沁みこんでくるみたいだ。
「そういうふうに言ってくれるのって、坂木くんだけだよ。だって、他の人はたぶん、引きこもりだったなんて白い目で見てくると思うし」
朝、江藤くんに言われたときに、クラス中、学年中に噂が広まる想像をした。その恐怖を思い出して、下唇を噛む。
「そう思う人もいれば、そう思わない人もいるでしょ」
「そう思う人のほうが多いよ」
「それ多数決させて、どうなるの?」