笑っていたい、君がいるこの世界で

 あぁ、やっぱり、私は高校生になっても、普通の生活が送れないんだ。そういう運命なんだ。

「お昼、どこで食べてるの?」
 昼休み、お弁当を持ってひとりでいつもの中庭へ行こうとすると、廊下で神谷さんのほうから声をかけられた。彼女もお弁当と水筒を手に持っている。
「な……中庭だけど」
「ふーん。私も今日、そこにしようかな」
 神谷さんはいつも、教室の隅でひとりで食べていた。私はそんなふうに堂々とひとりで食べることができずに中庭に行っていたけれど、まさか神谷さんが声をかけてくるとは思わなかった。
「なに? ダメ?」
「ううん……ううん」
「なんで二回言ったの?」
 ふっと微笑む神谷さんを、廊下を歩いていた男子が二度見している。私は嬉しさ半分、朝に江藤くんに言われたことで複雑な気持ち半分で、神谷さんと並んで中庭へと向かった。
「へぇ、穴場。よく見つけたわね」
「うん、雨の日は無理だけど、ちょうどこの時間、陰になってて涼しいんだ」
 昨日の帰りにけっこうしゃべれたからだろうか、私は普通に神谷さんと会話をして、ベンチに座った。そして、お弁当を食べ始める。