「はい、では体育館へ」
 背中に全集中していると、入学式が始まった。入場に出遅れそうになった私は、慌てて足を踏みだしたのだった。

 入学式のあとは、それぞれの教室に入り、担任の先生からの話があった。私のクラスは、一年一組だ。様々な配布物や教科書を受け取り、明日からの学校生活についての説明を受ける。
 私は、すでにぐったりしていた。式と名がつく行事は、なんでこんなに大人の話が長いのだろう。引きこもり中も軽いストレッチはしていたものの、やっぱり筋力は落ちていて、背筋を伸ばして座っていることすらキツイ。それなのに、体育館でも教室でも、長時間硬い椅子に拘束されて、うんざりだ。
 けれど、姿勢を崩すことははばかられた。入学初日から悪目立ちしたくないし、教室の席も名前順で、すぐうしろに坂木くんがいるからだ。
「よし、それじゃ、自己紹介をしてもらうか」
 はい、いらない、それ。きっと教室にいる九割は、自己紹介なんて不要だと思っているはずなのに、先生は楽しそうな顔で、端と端の列の先頭の生徒同士でじゃんけんをさせる。