笑っていたい、君がいるこの世界で

「神谷さんにとっていいと思える男の人って、どんな人なんだろう……」
 坂木くんが好きなのかダイレクトに聞けない私は、遠回しにつぶやいてみる。すると、神谷さんは真顔になって答えた。
「一周回って、私に興味がないような人」
「ええっ? そんな人いる?」
「いるに決まってるじゃない。チヤホヤしてくる人とかぐいぐいくる人が、とにかく苦手なの。だから、こっちが好きになるまで無関心っぽい態度の人のほうがありがたいわ」
 ……難しい条件だ。駆け引き上手なかなりの策士じゃないと、神谷さんは攻略できなそうだ。
「じゃあ……坂木くんは? タイプじゃないの?」
 聞いてしまってから、口を押さえた。そこまで深い質問をするつもりじゃなかったからだ。けれど、神谷さんは腕を組んでうなりながら、ちゃんと答えてくれる。
「ないわね。あんな爽やかさと優しさを標準装備してる人、大変そうだもの。女同士で嫉妬したりされたりして、揉め事が起こるのが目に浮かぶわ」
「あー……たしかに」
 それは、激しく同意だ。何度もうなずくと、それを見た神谷さんが「でしょ? 最初から除外よ」と念を押す。
「紺野さんは? 彼氏は?」