笑っていたい、君がいるこの世界で

「私が嫌われる理由って……さっき言われたことより、空気を読んだり人と合わせたりできないこととか、作り笑いができないってことが大きい気がする。きっと、私のほうがコミュ障よ」
 私は返す言葉が見つけられず、ただ神谷さんのうつむいた横顔を見る。さっきの笑顔とは違う、少し寂しげな微笑みだ。
「でも、昔から嫌なの。苦手は必ず克服すべきだとか、みんなと同じようにやれなきゃいけない、なんていう圧が。なんで、自分の意に反して同調したり、愛想を振りまいたりしないといけないの? なんで、それが“できて普通なこと”になってるの? よくわからないわ」
「……うん。その、よくわからないの……よくわかる」
 たしかにそうだ。日本人はとくになのかな。私にとっては、みんなの“できて普通なこと”の基準が高すぎる。神谷さんと違って、私は普通を目指して下から這い上がろうとしていたけれど、結局できていないし。
「紺野さんて、聞き上手ね」
「そうかな」
「そして、話させ上手だわ。紺野さんといると、いろいろ話せる。受け入れてくれる雰囲気が出てるからかな」
「初めて言われた」