私は、必要以上に髪をさわり、リボンや ブレザーの裾を整える。久しぶりの他人との会話に動揺を隠せず、目も泳いでしまう。しかも、アラタに激似の男子だ。動揺するなというほうが無理だ。
 それにしても、なんて優しい人なのだろう。中学のときの男子たちは、がさつで意地悪で、気遣いの“き”の字も持ち合わせていなかったというのに、高校にはこんな男子もいるんだな。
 そう思って、もう一度彼を見ようとこっそり振り返った。すると、すぐ真うしろに並んでいたものだから、心臓が飛び出るほど驚いてしまう。
「な、なん、なんで」
「なんでって、俺、坂木だから。名前順でここなんだけど」
「そ、そう! ……そうなんだ」
 バクバクいっている胸を押さえ、私はブリキ人形のように前へと向きなおった。
 びっくりしたー……。ていうか、これだけ挙動不審にしているから、変に思われたかもしれない。いや、絶対思われた。すぐうしろに男子がいるなんてただでさえ緊張するのに、こんなアラタそっくりの素敵男子だと緊張が倍増するじゃないか。
 でも……そっか、坂木くんていうのか、彼は。同じ列に並んでいるということは、同じクラスということだ。