笑っていたい、君がいるこの世界で

 友達じゃない人からは、嫌でも聞こえてくるのだけれど。皮肉っぽく思っていると、神谷さんは風で乱れた横髪を耳にかけた。
「たしかに紺野さん、いつもひとりでいるわね。私と一緒で」
「うん。私と神谷さんじゃ全然理由が違うけど」
「なに? 理由の違いって」
 前をずっと見て話していた神谷さんが、私に視線を移した。私はその目をちらりと見て、悟っているような口振りで答える。
「神谷さんに対しては、みんな憧れの裏返しなんだよ。きれいで、凛としてて、男の人にモテて、そういうののやっかみで、あることないこと言うんだと思う」
 すると、神谷さんは鼻を鳴らした。
「じゃあ、紺野さんは?」
「私は、根暗でコミュ障だから」
「図書室でしゃべるときは、そんなふうに見えないけど」
「うん、図書室マジック」
 私の言葉に、神谷さんはプッと噴き出した。神谷さんが笑うのはレアだけれど、何回か見た。そのたびに、私は嬉しくなってしまう。
「なにそれ。やっぱり紺野さんて、面白い」
「ありがとう」
 神谷さんはまた微笑んで、それから足もとへ視線を落とした。そして、ぽつりと口を開く。